最終更新日 2022年8月1日
監修:漢方養生指導士・健康管理士・サプリメントアドバイザー
望月 みどり

ストレス臭とは、人が緊張しているときに、皮膚ガス(肌から出る気体)から臭う硫黄のような体臭のことです。
ストレス臭の硫黄のようなニオイは、「ラーメンの上のネギ」とも例えられます。
「ストレス臭って何?」と調べている方は、「自分の体臭がストレス臭かもしれない」と不安に感じているかもしれませんね。
この記事では、ストレス臭とは何なのか詳しく解説したうえで、ストレス臭の原因や対策までご紹介します。
最後までご覧いただくと、気になるストレス臭について理解し、さらにストレス臭を防ぐために何をすべきかわかるようになります。
では、さっそく見ていきましょう。
目次
ストレス臭とは?

冒頭でも触れましたが、ストレス臭とは人が緊張したときに出る特有のニオイです。詳しく見てみましょう。
1-1. ストレス臭は男女年齢問わず緊張状態のときに発生するニオイ 足の臭いにも影響が?
ストレス臭は、資生堂の研究員や臭気鑑定士が発見し、2018年に発表されたばかりのニオイです。
まだ発見されてから日が浅く、解明されていない面も多いのですが、緊張状態にある人から共通して同じニオイがすることは、突き止められています。
“緊張状態にある”とは、具体的には、リラックス時と比べ心拍数が上がり交感神経が優位になっていたり、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが唾液中に増えていたりする状態です。
自律神経の乱れにより、手や足の発汗が促進され、皮膚の上に存在している雑菌が分解されて、イソ吉草酸が多く発生し、足の臭いにつながる人も多くいます。
ストレス臭は、特定の性別や年代だけに見られるものではなく、男女問わず幅広い年齢層から検出されています。
面接や会議など、大きなストレスのかかる場面で、多くの人が嗅いだことのあるニオイと考えられています。
1-2. ストレス臭は全身から出る皮膚ガスから臭う
「ストレス臭はどこから臭うの?」というのが気になるところですが、ストレス臭は皮膚ガスから臭います。
皮膚ガスとは、体の表面から発生する揮発性の物質の総称です。
目には見えませんが、私たちの皮膚からは、気体(ガス)が排出されています。この気体(ガス)には、ニオイのない二酸化炭素からニオイのあるアンモニアまで、さまざまなものが含まれています。

皮膚ガスは、体調、加齢、食べ物などによって変化することが知られていましたが、「緊張」によっても変化することが、ストレス臭の存在によって明らかになったのです。
1-3. ストレス臭は硫黄のようなニオイがする
ストレス臭のニオイは「硫黄のようなニオイ」と表現されます。
今までに、自分や周囲の人が極度の緊張状態にあるときに、硫黄のようなニオイがした経験はありませんか。
もし心当たりがあれば、それがストレス臭の可能性が高いでしょう。
また、ストレス臭を発見した研究員たちのうち複数の人が、ストレス臭の印象を「ラーメンの上のネギ」と表現しています。

ラーメンを食べているわけでもないのに、どこからともなくラーメンの上のネギのニオイが漂ってきたら、近くに緊張状態の人がいるかもしれません。
ストレス臭の2つの大きな問題

緊張したとき、皮膚ガスから発生するストレス臭。ストレス臭には、大きな問題が2つありますので、詳しく見てみましょう。
2-1. 周囲の人に不快感を与えてしまう
1つめの問題は「周囲の人に不快感を与えてしまう」ことです。
「このニオイは何?」と人に疑問に思われるニオイを漂わせることで、他の人に不快感を与えてしまいます。
現代では「スメハラ(スメルハラスメント)」という言葉もあるとおり、多くの人がニオイに敏感になっています。
たかが体臭とは軽く片づけられない状況となっており、ニオイで人に不快な思いをさせないことは、大切なマナーといえるでしょう。
2-2. ストレス臭を嗅ぐと本人も周囲の人も「疲労」「混乱」が強まる
2つめの問題は「ストレス臭を嗅ぐと本人も周囲の人も『疲労』『混乱』が強まる」ことです。
ストレス臭を発見した資生堂によれば、ストレス臭を嗅ぐ前後の心理変化として、ストレス臭を嗅いだ後は「疲労」「混乱」の指標が高まることが確認されています。
これは、ストレス臭と他の体臭の大きな違いといえます。ストレス臭を嗅ぐことで、精神面に悪影響が及ぶ可能性があるのです。
緊張してストレス臭が出た本人は、自分で自分の体臭(ストレス臭)を嗅ぐことで、ますます疲労や混乱が深まり緊張する……という悪循環になります。
さらに、この緊張やストレスが、他の人にも伝染してしまうのが、ストレス臭の大きな問題点です。
「緊張は人に伝染する」「緊張している人を見ると自分まで緊張してくる」といわれることがありますが、その一因こそ、ストレス臭の可能性があります。
ストレス臭の具体的な対策はまだ解明されていない

単に臭いだけでなく、精神にも影響を与えてしまうストレス臭。
ストレス臭がしないように対処していきたいところですが、結論からお伝えすると、ストレス臭に対して明確な効果がある具体策は、まだ発見されていません。
というのも、先ほど触れたとおり、ストレス臭の存在自体が明らかになったのは2018年。今まさに研究が進められているところです。
現在、「ストレス臭の主要成分は、ジメチルトリスルフィド(DMTS:dimethyl trisulfide)とアリルメルカプタン(AM:allyl mercaptan)の2つ」というところまでは突き止められています。
これらを抑える技術が開発されれば、ストレス臭をダイレクトに消臭することができるようになるかもしれません。
ストレス臭に有効と考えられる3つの対策

ストレス臭の具体的な対策はまだ解明中ではありますが、有効と考えられる対策は存在します。
ここでは、3つの対策をご紹介しましょう。
3-1. ストレス源をできるだけ遠ざける
1つめの対策は「ストレス源をできるだけ遠ざける」ことです。
ストレスによって発生するのがストレス臭ですから、その根本的な原因を遠ざけるのが第一です。
職場の配置換え、仕事内容の変更、家事育児の負担軽減……など、周囲にヘルプを出して、ストレスを感じている環境を変える勇気を持ちましょう。
とはいえ、「ストレス源を遠ざけたくても、すぐに遠ざけられないのが現実」という方も多いかもしれません。
そんなときには、ストレス源のことを考えずに済む時間を少しでも増やしてください。リラックスできる時間を作り、ストレスを感じずに済む時間を長くしていきましょう。
▼ ポイント
3-2. ストレスを受けた後はできるだけ早くシャワーを浴びる
2つめの対策は「ストレスを受けた後はできるだけ早くシャワーを浴びる」ことです。
なぜなら、ストレス臭が皮膚に残ったままにしておくと、精神的な混乱や疲労が深まってしまうからです。
例えば、会社や家庭で嫌なことがあったとき、その出来事が終わった後でも、ずっと嫌な気持ちを引きずってしまうことはありませんか。
「嫌な気持ちを引きずってしまう自分は、ダメな性格だ」と思ってしまうかもしれませんが、性格の問題ではなく、単純に肌に残ったストレス臭を嗅ぎ続けているせいかもしれません。
ストレスを受けた後は、できるだけ早くシャワーを浴びて、ストレス臭をリセットしましょう。
「お風呂に入るとサッパリする」というのは、気のせいではなく、ストレス臭をリセットしたサッパリ感とも考えられるのです。
▼ ポイント
3-3. ストレスに強い心身づくりに取り組む
3つめの対策は「ストレスに強い心身づくりに取り組む」ことです。
ストレスをいくら遠ざけても、完全にゼロにするのは、難しいでしょう。
そこで、ストレスとなる出来事に対面したときに、緊張したり動揺したりしない強い心身づくりに取り組むことが役立ちます。
強い心身づくりに役立つメソッドは数々ありますが、一例を挙げましょう。
それぞれの詳細はここでは述べませんが、「ピン!」とくるものがあれば、インターネットで検索したり関連書籍を読んだりして、学びを深めてみてください。
自分自身で積極的にメンタルケアを取り入れることで、緊張にも強くなり、ストレス臭を抑えることができるはずです。
ストレス臭以外にもあるストレスで強くなりやすい3つの体臭

ここまで、皮膚ガスに硫黄のようなニオイが発生する「ストレス臭」について解説してきました。
実は、ストレス臭以外にも、ストレスが引き金となって強くなる体臭があります。3つご紹介しましょう。
5-1. アポクリン腺からの汗臭
1つめは「アポクリン腺からの汗臭」です。
アポクリン腺とは、汗を排出する器官(汗腺)の一種です。
汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があるのですが、アポクリン腺からはスパイシーなニオイ(いわゆるワキガ臭)のある汗が排出されます。

アポクリン腺は、ストレスを受けると活性化します。
例えば、「大勢の前で緊張のスピーチを終えた後、汗をかいた自分のワキからワキガのようなニオイがする」という場合、原因はアポクリン腺から排出された汗と考えられます。
対策としては、汗臭の対策を行うことが役立ちます。
▼ 汗の臭いを防ぐ対策
詳しくは「汗が臭い原因と対策!汗臭の悩み・汗臭いニオイをなくす10の方法」をご覧ください。
5-2. 加齢臭
2つめは「加齢臭」です。
加齢臭は「酸化」によってひどくなるという特徴があります。下の図は、加齢臭の原因物質(ノネナール)が生成されるメカニズムです。

図の中に登場する『活性酸素』は、ストレスを受けると増えます。
つまり、【ストレスを感じる→活性酸素が増える→加齢臭がひどくなる】という図式が成り立つのです。
加齢臭の対策としては、以下があります。
▼ 加齢臭を防ぐ対策
詳しくは「本気の加齢臭対策で嫌なニオイを抑え込む!すぐ実践できる15の方法」にて解説しています。あわせてご覧ください。
5-3. 口臭
3つめは「口臭」です。
口臭を抑えるためには、十分な唾液が必要です。
しかし、ストレスを感じると、口が渇きます。ストレスによって口が渇くと、その分、口臭がひどくなってしまうのです。
「ストレスを感じたときに、口が臭くなる」という方は、口が乾かないようにする工夫が必要です。
小まめに水分を補給して口の中のうるおいを保ちましょう。
緊張しそうな場面があらかじめわかっている場合は、唾液を分泌させる器官である「唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)」をマッサージしておくのもおすすめです。
口臭について詳しくは「口臭の種類と原因は?専門家がわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
まとめ
ストレス臭とは、男女年齢問わず緊張状態のときに発生するニオイのことです。
全身から出る皮膚ガスから臭っており、硫黄のようなニオイが特徴です。
「ラーメンの上のネギみたいなニオイ」という例えも、よく使われます。
ストレス臭には、次の2つの問題点があります。
▼ ストレス臭の問題点
ストレス臭の具体的な対策はまだ解明されていませんが、次の3つの対策が有効と考えられます。
▼ ストレス臭の対策
なお、ストレス臭以外にも、ストレスを受けたことがきっかけで強くなりやすい3つの体臭がありますので、こちらもチェックしておきましょう。
ストレス臭の存在を知ることは、自分や周囲の人がストレスにさらされていないか気づくためのバロメーターにもなります。
ストレス臭への理解を通して、できる限りストレスのない毎日を目指していきましょう。それこそが、ストレス臭の根本的な解決へとつながります。
漢方養生指導士・健康管理士・サプリメントアドバイザー 望月 みどり